不倫慰謝料を請求すべきでないケース

文責:弁護士 森田清則

最終更新日:2025年08月27日

1 実務においては不倫慰謝料を請求しない判断をすることもある

 法律上は請求が可能であることと、実際に請求が可能で、かつ経済的にプラスになることとは別の問題です。

 このことは、不倫慰謝料請求の場面においても、当てはまります。

 特に以下のような場合、不倫慰謝料を請求しないという判断をすることもあります。

 ①十分な証拠を集めることが困難である場合

 ②見込まれる不倫慰謝料の金額が低い事案である場合

 ③不倫相手に故意または過失がないと考えられる場合

 以下、それぞれについて説明します。

2 十分な証拠を集めることが困難である場合

 実務において不倫慰謝料を請求するためには、不貞行為(不倫をした配偶者と不倫相手との間における性的関係)があったことを証明できる証拠が必要です。

 代表的なものとして、ホテルや不倫相手の自宅に出入りする場面の写真や、性的関係を推認させる内容のメール、メッセージなどが挙げられます。

 これらの証拠が不十分である場合や、単なる親密な関係だけがうかがえるにとどまるものである場合、基本的に訴訟では慰謝料請求が認められません。

 証拠を集めきれていない状態で慰謝料請求をすると、他の証拠を抹消されることや、逆に損害賠償を求められる可能性もあります。

 そのため、十分な証拠が確保できない場合、無理に慰謝料請求を行わないということもあります。

3 見込まれる不倫慰謝料の金額が低い事案である場合

 事案の内容から見て、不倫慰謝料の金額が低額にとどまる見込みである場合も、かかる費用と照らし合わせて、請求を断念するという判断をすることもあります。

 一般的に、弁護士費用は数十万円程度必要となるほか、証拠の収集を専門家に依頼した場合、その費用もかかるためです。

 不倫の慰謝料が低額になる場合の要因については、こちらをご覧ください。

4 不倫相手に故意または過失がないと考えられる場合

 離婚せずに夫婦関係を継続する場合、不倫相手に対してのみ不倫慰謝料の請求をするということもあります。

 配偶者と同一生計である場合、不倫をした配偶者から慰謝料の支払いを受けても、実質的には支払いを受けていないことと同じであるためです。

 もっとも、不倫相手において、相手(不倫をした配偶者)が既婚者であることを知っていた(故意)か、注意すれば知ることができた(過失)という条件を満たす必要があります。

 特に、配偶者が巧妙に独身であるかのように装っていた場合には、不倫相手に対する不倫慰謝料請求が認められない可能性があります。

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